ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

OSJ-vol53

InterviewOSJ freestyle express vol.539深沢瑛里選手セーリング―これまでの運動歴、セーリングとの出会いとは?セーリングを始めたのは小学校3年生のときです。江ノ島で生まれ育ち、家の前が海という環境もあって、知り合いにセーリングをやっている人がいたんです。試しにクラブチームに体験に行ってみたら楽しくて。同世代の友達とわいわい遊ぶ感覚で練習を始めました。同時にやっていたのが、元陸上選手の父の影響で始めたトライアスロンです。小学生時代は、平日は朝5km走り、学校に行ってから、放課後はスイミングスクール、夜は家のローラー台で30分自転車を漕ぐ生活でした。土日や夏休みになれば、日中は学校の代わりにヨットの練習が入るので、すごくハード。しかもトライアスロンの練習は親と1対1なので逃げられないし、ケンカをしては泣きながらやっていました(笑)。―セーリングの道1本に決めたきっかけは?純粋にセーリングが好きだったから。セーリングに集中したいならトライアスロンで勝ってからにしなさいと言われ、悔しかったので、オールキッズの全国大会で3回優勝して辞めました。ジュニアの日本選手権では一度も勝てずに毎年4位でしたけどね。―すごいですね。トライアスロンでも十分活躍できたのでは?いやいや。スイムのスピードが上がらず、いつも後ろから5番目くらいだったんです。バイクでトップになり、ランでトップをキープという勝ちパターンだったので、それでは世界は目指せません。一方のセーリングでは、中学2年でアジア選手権、3年生でアジア大会、国体、世界選手権に出場。国を背負って戦うシニア選手たちの活躍がかっこよくて、自分もああなりたいと思えたのが大きかったです。ただ、トライアスロンの練習で基礎体力がついたからセーリングでも結果を残せた面は絶対にあります。バイクのトレーニングはこれからも取れ入れたいと思っています。―セーリングの面白さ、むずかしさとは?一つとして同じレースはなく、0.1秒単位でどんどん状況が変わっていくところは、面白さでありむずかしさでもあります。私の種目は「Nacra(ナクラ)17級」という、東京五輪から採用される新種目。2人組で行います。フォイルと呼ばれる水中翼があり、スピードに乗ると船が1m以上浮き上がります。この“跳んでいる”状態になると30ノット(時速約55km)までスピードが上がるので、いかに長くこの状態をキープできるかが、勝敗を大きく左右するんです。跳ぶためには風を船の下に入れることが大事なので、レース前には「この海面で風を入れよう」と入念なプランを立てます。ただ、1度のレースで約30艇ほどが一斉にスタートするため、自分たちの前にほかの船がきてしまえば、風を取り込めずスピードに乗れません。風を読みながら、ほかの船を避けてどの海面に進むべきか。複数の選択肢の中から瞬時に判断して舵を切らなければ勝機を逃してしまいます。経験を積めば積むほど、できることが増えていくのもこの競技の面白さですね。―2人組の種目では、意思疎通がいかにスムーズにできるかも大切ですよね。どういう役割分担なのですか?船の前方で操作する人は風を取り込む担当。ほかの船の動きをペア相手に伝えます。後方の人は、ペアからもらった情報を頼りに、次の判断を決め、舵を切ります。私は後方担当。レースが始まれば「次はどう動こうか」と相談し合う時間はないので、状況に合わせてそれぞれが同じ目的に向かって動けないといけない。相方とは、練習のときから意見を言い合い、すり合わせをしています。―深沢選手の強みはどこですか?日本人選手の中では、誰よりも跳ぶ船に乗ってきているのでそこは強みかなと思います。大学1年生のときに、ヨーロッパへ2カ月間の遠征に行ったことがあり、そこで跳ぶ感覚やスピード感を得ることができました。―今後の目標は?セーリングは、環境面でも体力面でも続けるのが大変なスポーツです。私は周囲の方々のご理解、ご協力により、働きながら競技を続けることができています。これからも、自分のためはもちろん、支えていただいている周囲の方々のために少しでも良い結果を残したい。とくに現在指導しているジュニアチームのメンバーなど、将来セーリング界を引っ張る後輩たちに、セーリングで活躍する道筋を示す意味でも、必ず五輪で活躍したいと思っています。深沢瑛里(ふかさわ・えり)神奈川県藤沢市出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。富士通株式会社に所属。パワーバーアスリートインタビュー東京五輪セーリング競技開催地、湘南を■深沢選手の戦績2015年49erFx全日本選手権大会優勝、49erFx世界選手権大会出場(日本代表)JSAFオリンピック特別強化対象選手2016年アジア選手権大会出場(日本代表)、49erFx全日本選手権大会優勝(2連覇)JSAFオリンピック特別強化対象選手2017年JSAFオリンピック特別強化対象選手